腸内フローラ研究所

腸内フローラ(腸内細菌叢)と花粉症の関係

腸内フローラと花粉症の関係

春先になると徐々に大変になる花粉症。これもまた腸内細菌と関わりがあるというとびっくりされる方が多いかもしれません。
ただ、こういう言い方をするとどうでしょう?

人間の免疫細胞の6割は小腸に存在している。

そうなんです。人間の免疫細胞の多くは小腸に存在しており、日々、体に入る異物たちを監視しています。
また、その小腸において、免疫細胞に少なくない影響を与えているのが腸内細菌、腸内フローラなのです。

腸内細菌と免疫の関係

このページで触れたように、私達の免疫機能と腸内細菌との間には、深い関係があることがわかっています。

この免疫機能は、体にとって害のあるものとないものを判別しているわけですが、
通常花粉などは、無害なものとして、そのまま小腸から大腸へと進み、体の外に排出されます。
花粉症とは、この免疫機能が正常に働かないことによって起こる症状です。

腸内細菌は、この免疫機能を正常に働かせるための役割を持っています。

腸内細菌自体も、体にとって異物になるので、小腸にある免疫細胞は、
腸内細菌が侵入してくると、体にとっての異物なのかどうか、体にとって害のあるものかどうかを判別します。
空港にある金属探知機を想像してみるといいと思います。
空港の手荷物検査場では、手荷物を金属探知機に通し、自身も金属探知機のアーチの中を通ります。
私自身もよくやってしまうのは、ベルトの取り忘れ。
ベルトにあるバックルが金属探知機を反応させてしまうんですね。
金属探知機が反応すると、空港職員がやってきて、手持ちの探知機でさらに調べます。
害になるものではないことがわかると、通過させてもらえます。
ただ、なんとなく怪しいものや、探知機の反応の発生源がわからないものがあると、
別室に連れて行かれてくまなく調べられます。

私達の体の中では、こういった働きを免疫細胞が担っています。
正常に働いている免疫細胞であれば、異物を体に害のあるもの、害のないものを正しく判別してくれます。
花粉も本来は害のないものですが、
この免疫機能が正常に働いていない場合、花粉を害のあるものと判別してしまい、
免疫細胞の中の排除や攻撃を担う細胞たちが花粉に対して攻撃を始めてしまいます。
この攻撃が行われていることで、くしゃみや鼻水などを出せという司令が脳に行くのです。

それでは腸内細菌はこの働きにどのように関わっているのでしょうか。

最近の研究では、この免疫機能の暴走とも呼べるものに対して抑制する働きを持つTレグ細胞というものに注目が集まっています。
このTレグ細胞は、免疫の攻撃を担うT細胞を抑制する作用があります。
このTレグ細胞を活性化させるのが、腸内細菌の生産物である酪酸(短鎖脂肪酸)です。

短鎖脂肪酸については、また別の機会に詳しく説明しますが、
腸内細菌の生産物として最近注目されているものです。
この酪酸が成長途中(未熟な)のT細胞に働きかけ、Tレグ細胞へと変化させます。
このTレグは先程述べた通りT細胞の攻撃をなだめる作用があり、
花粉などの異物に対して暴走しているT細胞をなだめ、過剰な免疫反応を抑制しているのです。

つまり腸内細菌のバランスが悪く、このTレグ細胞が活性化される環境がないと、
花粉症を始めとする免疫不全を起こしやすくなるということです。

腸内細菌の活性化で花粉症の症状を緩和しよう

細菌の研究では、腸内細菌の働きを活性化することで、アレルギーを始めとした免疫不全の症状を緩和できることがわかってきました。

花粉症の症状を緩和する薬としては、抗アレルギー薬が使われることが多いのですが、
抗アレルギー薬の働きは、異物に対して反応してしまう抗体の働きを抑制するものです。
抗アレルギー薬は基本的にその有効性が現れるまでに2週間程度を要するため、
花粉症予防の意味合いで花粉が飛散し始める2週間前には服用し始める必要があります。

このため普段私達が飲んでいる花粉症の薬は即効性のある抗ヒスタミンと高アレルギーの両方が含まれている場合が多いです。
抗ヒスタミンは痒みなどの原因を直接抑制する効果があるため、鼻水やくしゃみなどが出始めてしまったあとでもその効能が見られます。

さて、それでは腸内細菌の働きを活性化させることで、どのように花粉症の症状が緩和されるのでしょうか?

免疫の暴走を抑制するには、Tレグ細胞を増やす必要があることは前段で述べました。
それではこのTレグ細胞を増やすためにはどうしたらいいのでしょうか?

腸内細菌は常に更新されています。

腸内細菌の多くは、3日から1週間程度で死滅してしまいます。
もしあなたがヨーグルトを食べて乳酸菌を摂取し、腸内にうまく定着できたとしても、
その生命は長くても1週間です。また腸内環境が悪い状態であれば、さらにその生命は短くなってしまいます。

腸内細菌の活性化にはまず、腸内環境が良好なこと、腸内細菌にとっての食べ物が沢山供給されていること、
ビフィズス菌に代表される善玉菌が随時取り入れられていることなどが必要になります。

つまり普段の食事習慣の改善が、花粉症の症状緩和への近道なのです。

花粉症の症状緩和に有効な食事とは

腸内細菌を活性化して、免疫機能を正常にしていくことで、花粉症の症状が緩和されていくことは前段で述べました。

それでは、どういった食事が腸内細菌の活性化に繋がるのでしょうか?

腸内細菌の食べ物としては、食物繊維が最も有名です。
食物繊維をたくさんとりましょう!という言葉はよく便秘改善の本などに書いてあるのですが、
この食物繊維が便を絡めとって、排出を促すような書かれ方をしています。
これは合っているようで合っていません。
食物繊維自体は腸内細菌が分解します。その分解した際に排出される生産物によって、腸内の蠕動運動が活性化されます。
これにより排便へ向かって大腸が動き出すのです。

みなさんは、食物繊維というと筋張ったゴボウや、レタスなどを想像するかと思います。
この遷移に便が絡め取られて排出されるようなイメージをもっていると思いますが、
実際は、上で述べたように腸内細菌がそれらを消化して、排出される生産物による影響が大きいのです。
つまり食物繊維自体は、ごくごく小さくても問題なく、筋張っているからといって、必ずしも有効な食物繊維ではないという可能性もあるということです。

それでは、腸内細菌にとって良い食事をご紹介しましょう。

まずは直接的に腸内細菌を活性化するものとしてオリゴ糖が有名です。
日本の腸内細菌研究の第一人者である光岡先生が開発に携わったことでも有名です。
オリゴ糖は、直接腸内細菌に作用する唯一の明らかになっている物質です。
普段からコーヒーや紅茶などにオリゴ糖を入れて飲んでみるというのはビフィズス菌の活性化に非常に有効です。

食事であれば、以下のような食材が腸内細菌が喜ぶ食事です。

1.発酵食品

日本の食事は発酵文化が根付いたものと言っても過言ではありませんが、以下のような発酵食品は非常に有用です。
味噌、しょうゆ、納豆、漬け物、鰹節、日本酒、麹、などです。
日本人には非常に馴染みのある食品ですね。
これ以外にも、ヨーグルト、チーズ、キムチ、ナンプラー、なども含まれます。

2.食物繊維

食物繊維が多く含まれる食事も、日本では割と昔から食べられてきたものが多いです。
ゴボウ、きのこ、玄米、などです。
これ以外にも海藻類などがあるのですが、それは別でご紹介します。
ゴボウに関しては、世界中の人々で最も食べ、最もゴボウを愛しているのは、間違いなく日本人だと思います。
一般的な欧米人にゴボウを見せれば、ただの根っこにしか見えず、しかめっ面をされること間違いないでしょう。

3.海藻

海藻は、世界中で最も食べているのは日本人であると言って間違いないでしょう。
世界においては、海藻はゴミと認識されている場合の方が圧倒的に多いです。
海藻については、日本と非常に密接な関係にあり、
世界中の人々の中で、海藻を分解できる腸内細菌を持っているのはほとんど日本人のみです。
つまり何百年何千年という日本人の暮らしの中で海藻を頻繁に食べていた証拠でもあります。
海藻にはどんなものがあるでしょうか?
ひじき、昆布、わかめ、のり、めかぶ、もずく、などです。
どれを見ても、日本人にとっては馴染み深いというか、そもそもそれがないと、
食事が成立しないという感じでもあるのではないでしょうか。

また海藻については、食物繊維が非常に多く、ひじきなどはしいたけの10倍以上も含まれ、
海藻類については、軒並み食物繊維の含有量が高くなっています。

4.オリゴ糖を多く含むもの

オリゴ糖が有益なことは上で述べましたが、食べ物の中にもオリゴ糖を多く含むものがあります。
玉ねぎ、ゴボウ、大豆、などがあります。
オリゴ糖は、熱や酸にも強く、酢の物にしたり、煮物にしたり、大豆であれば豆腐にしても摂取できます。

このように日本人にとっては、腸内細菌を活性化することは、難しいことではありません。
普段の食事を見直し、来年の春には花粉症の症状が緩和されるように、日々の食事から見なおして行きましょう。

腸内フローラ(腸内細菌叢)と花粉症の関係