腸内フローラ(腸内細菌叢)が体に与える影響

このように、腸内フローラは、私達の体に様々な影響を及ぼしています。
腸内にいるために栄養摂取などの機能に限定されておらず、うつ病を始めとした精神病や、性格にも影響しているのではないかと、最近の研究にて言われ始めています。

腸内フローラの意外な影響

最近の研究で言及され始めている、いくつかの影響についてご紹介していきたいと思います。
※影響の仕組みなどの詳細は、また改めてご紹介したいと思います。

・アレルギー体質
花粉症
アトピー
食物アレルギー
・痩せ型、肥満型
・精神疾患
・糖尿病
・肌の若さ
・動脈硬化
・胃がん、大腸がん

ざざっと並べてみただけでも、えっ!こんなのにも影響があるの?というものばかりですね。

花粉症やアトピーなどは、細菌ではヨーグルトで改善した、なんて雑誌の記事やテレビ番組を見た方もいるかもしれません。
痩せ型、肥満型に影響があるちょうかという話については、2015年に放送されたHNKの番組で知っているというかたもいるかもしれません。
一つ一つの実証実験を経て、これらの影響が検証されてきたわけですが、
実験には、時間もかかりますし、腸内細菌の研究自体もまだまだ発展途上です。

上に示したような影響の他にも、もっともっと多くのことが腸内細菌によってもたらされているかもしれません。

以下では、その一旦をご紹介したいと思います。

人間の危険回避能力

小腸や大腸について、みなさんはどれくらいのことを知っていますか?

私たちは普段の生活の中で5感に頼って生活をしています。

5感とは、今更いうまでもありませんが、
触覚
視覚
聴覚
味覚
嗅覚
です。

これらは全部外部刺激に対して、反応しているものです。

触覚は指先で触れたもの、肌に触れたものなどです。
静電気などでビリっとなったり、とげとげしたものだったり、
触れると危ないもの、安全なものを感じ分けるのに使われています。

視覚は目で見たもの、その距離や大きさ、色、
経験値と合わせて、危ないものなのか、安全なものなのかを感じ分けるのに使われています。

聴覚は、耳で聞こえたもの、その距離や大きさなどです。
まだ人間がサバンナにいた頃ならば、象の足音などを聞き分けていたかもしれません。

味覚は、口の中で、甘い、辛い、酸っぱい、しょっぱい、苦いなどを感じています。
細菌では、日本人には馴染みの旨味も加わっています。
これらも同じように口の中に入れて危険なものか、安全なものなのかを判別するのに役立っています。

嗅覚は、味覚に近いものはありますが、
危険なものなにか、安全なものなのかを判別するのに役立っています。

こうしてみると、人間は外部からの刺激に対して、かなり警戒をしていることが伺えます。
対して、これらの5感によって、危険なものと見なされずに、
体の中に入ってしまったものはどうなっているでしょうか?

体の中でのウイルスとの戦い

例えば食中毒を例にとってみましょう。
食中毒の中でもよく耳にするノロウイルスを例に取ります。

ノロウイルスは、以下のような感染経路で私達の体の中に入ります。
1、食品媒介
2、接触
3、飛沫、塵埃

食品媒介とは、摂取した食品を通して感染するものです。
よく聞くのは牡蠣による感染ですね。
加熱が不十分だったり、調理した人の手についていたウイルスが食品についてしまったものなどを摂取したことによって感染します。

次の接触とは、すでにノロウイルスキャリア(感染者)の人の糞、吐瀉物などを触れて、その後の殺菌が不十分なため、感染してしまうケースや、ノロウイルスキャリアが触れたドアノブなどに触れ、感染してしまうケースなどがあります。

次に飛沫、塵埃ですが、ノロウイルスキャリアの糞や吐瀉物などの小さな飛沫が口や鼻などから侵入するケースや、糞や吐瀉物の処理が不十分であったため、それらが乾燥した後に、空気中に舞い、それを吸い込んでしまった場合などで感染してしまうケースです。

さてそれでは、私達の体に入ったノロウイルスはその後どのような形で、私達の体を蝕んでいくのでしょうか?

私達の口や鼻から侵入したノロウイルスは、食道を通り、胃に到達します。
この記事を読んだ方は不思議に思うかもしれません。
なぜなら胃の中は強い酸性になっており、細菌やウイルスなどは、胃酸の酸によって滅菌されてしまうからです。
ところがノロウイルスは、この酸に強い構造になっており、胃の中の酸性の海をいとも簡単に泳ぎ切ってしまいます。

さて、胃の中を通過したノロウイルスは、小腸の十二指腸と通過し空腸へとやってきます。
空腸までやってきたノロウイルスはこの空腸の上皮というところに定着し増殖を開始します。

小腸までやってきてしまったウイルスに対して、私達の体は無抵抗のままなのでしょうか?
みなさんは免疫や免疫細胞というものは聞いたことがあるでしょうか?
私達の体の中には、外部からやってきた細菌やウイルス、その他の有害物質に対して、
免疫機能というものが働いています。
簡単にいえば、お城の周りを守っている兵隊のようなものです。
胃酸がお城の周りを囲っているお堀なら、お堀の中を守っているのが、この免疫です。

お堀を渡って侵入してきた者に対して、まず兵隊の中の取り調べの役割をしているメンバーが、取り調べを開始します。
この取り調べて問題ないと判断されたものはそのまま通過をさせてもらえます。
ここで、悪者と判断された場合は、攻撃を担当するメンバーが攻撃を開始します。
攻撃が成功して悪者をやっつけることができれば、病気や感染症などにならずに済みます。

さてこの免疫に関して、その役割を担っているのが、免疫細胞です。
白血球の仲間で、マクロファージやリンパ球など幾つかの種類がいます。
この免疫を担っている白血球の仲間たちのおよそ60%が小腸に集中しています。
胃酸を通り抜けてしまった細菌、ウイルス、異物たちとの戦いの最前線がこの小腸なのです。
なぜ小腸に集まっているのか、それは、小腸な栄養素の吸収に大きな役割を果たしているからです。
もしこの栄養素の中に毒素が含まれてしまったら大変なことですよね。

では、話を戻して、空腸の上皮に感染したノロウイルスは、増殖を始めます。
もちろんこの間にも、免疫細胞から攻撃を受けているわけですが、
ノロウイルスの増殖のほうが早く、徐々に症状が出始めます。

ノロウイルスに感染し、その増殖が始まると1日から2日ほどの潜伏期間を経て、
徐々に体に異変が出始めます。
ノロウイルスであれば、下痢や吐き気、嘔吐などが起こります。

腸内フローラと免疫の関係

さてここでやっと腸内フローラの影響のお話です。

このノロウイルスの感染過程の中で、腸内フローラはどのような役割を果たしているのでしょうか?

小腸の中には、パイエル板と呼ばれる免疫関係の司令塔のような器官があります。
パイエル板は、腸内に侵入してきた物質を監視する役割を持っています。

このパイエル板と腸内細菌の関係ですが、ある実験で以下のような関係があることが発見されています。

無菌マウス(腸内細菌のいない実験用マウス)のパイエル板を観察すると、
パイエル板の発達が非常に弱く、通常のマウス(腸内細菌のいる実験用マウス)に比べて、
パイエル板の働きが弱くなっています。

司令塔の役割をするパイエル板の働きが弱くなることで、
体によって良い物、悪い物の判別機能が弱くなり、
良いものでも攻撃することがあったり、悪いものでも、そのまま通してしまうということが起こりえます。

この無菌マウスにある手法にて腸内細菌を入れると、
このパイエル板が発達し、正常な免疫の働きをし始めます。

また、人間の体においても、腸内細菌のバランスが良く、善玉菌が優位に働いている状態であれば、
インフルエンザの予防、つまり免疫機能が活発に働いているという実験の報告もあります。

このように腸内細菌の有無、または優位な状況にあるかによって、
免疫機能の働きに影響が出てくるのです。

これは、まだ確証のない段階ですが、腸内細菌が体に常に入り続けることで、
腸内細菌自体も体にとっては異物になりますから、パイエル板が常に監視の手を緩めずに、
勤勉に働くことによって、免疫機能がきちんと働ける状況を作っているのではないかと言われています。

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腸内フローラ(腸内細菌叢)が体に与える影響


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